COLUMN
徳島・神山町で17社が1日でAIアプリを自作|生成AI研修で見えた「買うよりつくる」
徳島県神山町で開かれた生成AIの実践合宿で、17社19名が自分専用のAIアプリを1日で完成させました。鍵になった「インプ...
この記事の要点
- 徳島県神山町で開かれた生成AIの実践合宿で、17社・延べ19名が1人1個、計19個の「自分専用AIアプリ」を1日で完成させた。
- 鍵は、作りたいものを「インプット・トリガー・アウトプット」の3点に分けて言葉にすること。AIに仕事を渡すのは、人に仕事を渡すのと同じ。
- コンセプトは「BuyよりBuild」。自分で作った道具は直せるから、「育てよう」という思いが生まれる。
皆さん、こんにちは。MIKAI Labの松坂です。
「生成AIの研修を受けたけれど、結局、仕事では使っていない」。企業や自治体の方から、こうした声を聞くことが増えました。使い方は分かった。便利そうだとも思った。それでも翌週には、いつものやり方に戻っている。皆さんの職場でも、似たことが起きていないでしょうか。
この夏、徳島県神山町で、少し違うやり方を試しました。「学ぶ」のではなく、「自分の仕事のためのAIアプリを、その日のうちに作りきる」合宿です。3回の開催で、17社19名の方が参加し、19個のアプリが生まれました。
今回は、その合宿で何をしたのか、そこで何が見えたのかを、講師を務めた立場から書いてみたいと思います。
3回で17社19名、19個のアプリが生まれた
まず、事実から整理します。
- 名称:自分専用AIアプリを1日で完成させる実践デイ合宿
- 主催:株式会社FemiCross(徳島県神山町)
- 講師:松坂孝紀(株式会社MIKAI Lab)
- 会場:神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(徳島県名西郡神山町)
- 開催日:2026年7月7日、7月27日、8月19日の3回
- 参加:17社・延べ19名。全員が1人1個、計19個のAIアプリを完成
参加されたのは、徳島県内を中心とした中小企業や学校、団体の皆さんです。プログラミングの経験がある方は、ほとんどいませんでした。
実際に生まれたアプリの例は下記のようなものです。
- 予約アプリ:予約の受付から料金計算、LINEでの通知、カレンダー登録までを一つにまとめたもの
- 見積検索アプリ:Excelで管理してきた見積データを、キーワードですぐに探せるようにしたもの
- 課題進捗の確認アプリ:生徒の課題の進み具合を見える化し、添削や面談の管理を助けるもの
- スケジュール・仕事管理アプリ:報告書づくりと予定の管理をまとめて楽にするもの
どれも、世の中に出回っている製品と比べれば小さな道具です。けれど、その人の仕事の、その人が困っているところに、ぴったり合わせて作られています。
なぜ「学ぶ研修」ではなく「1日で作りきる」にしたのか
この合宿のコンセプトは、「BuyよりBuild」でした。
これまで、仕事の道具は「買うもの」でした。良さそうなサービスを探して、契約して、自分たちの仕事をそのサービスに合わせていく。それが当たり前だったと思います。
ところが生成AIによって、この前提が変わりつつあります。自分の仕事に合った小さな道具なら、自分で作れるようになってきました。しかも、専門の開発者でなくても、です。
だとすれば、研修でまず体験してほしいのは、AIの機能の一覧ではなく、「自分にも作れた」という手応えのほうではないでしょうか。そう考えて、1日の終わりには必ず動くものが手元に残る、という形にしました。
鍵は「インプット・トリガー・アウトプット」の3点整理
とはいえ、「何でも作れますよ」と言われても、人は手が止まります。そこで合宿では、作りたいものを次の3つに分けて考えてもらいました。

- インプット:何をもとにするのか(音声、領収書の写真、Excelの表、予約の情報など)
- トリガー:いつ動くのか(ボタンを押したとき、毎週月曜の朝、予約が入ったとき、など)
- アウトプット:何が出てくるのか(議事録、精算書、通知のメッセージ、検索結果など)
たとえば「議事録づくりを楽にしたい」なら、インプットは録音や自分のメモ、トリガーは会議が終わったとき、アウトプットは決まった形の議事録、という具合です。経費精算なら、領収書の写真をもとに、月末に、精算書が出てくる。
私は参加者の皆さんに、「AIに仕事を渡すのは、人に仕事を渡すのと同じです」とお伝えしました。何をもとに、いつ、何を出してほしいのか。それが言葉になっていなければ、人に頼んでもAIに頼んでも、思ったものは返ってきません。
逆に言えば、この3点が言葉になった時点で、アプリの設計はほとんど終わっています。あとはそれをそのままAIに伝えれば、形にする作業はAIが手伝ってくれます。
当日の流れ:導入50分、つくる3時間、見せ合う30分
当日は、おおよそ次のような流れで進めました。

- 導入(約50分):自己紹介と、今日のゴールの共有。3点整理の考え方と、いくつかの例を紹介します。
- つくる時間(約3時間):自分の仕事を振り返り、AIに任せたい作業を一つ選んで、3点に整理します。そのうえで、ChatGPTやGeminiなど、ふだん使っている環境でアプリを作っていきます。
- 見せ合う時間(約30分):できたものを、全員の前で見せます。
つくる時間に入る前に、4つの合言葉を共有しました。
- 簡単なところから始めよう
- いきなり完璧を目指さない
- 困ったら、また相談しよう
- できたら見せよう。恥ずかしがらなくていい
最後の「見せ合う時間」は、あえて最初から時間割に組み込みました。人に見せると決まっていると、不思議と手が動きます。そして他の人の画面を見ることで、「それなら、うちの仕事にも使えそうだ」という発見が生まれます。
つまずいたら、AIにこう聞く
作っている途中で、手が止まる瞬間は必ず来ます。そのときのために、AIへの聞き方を3つ用意しました。
- 「こういうアプリを作りたいので、必要な情報を考えたうえで、不明な点を質問してください」
自分で全部を説明しようとせず、AIのほうから聞いてもらいます。 - 「一問一答形式で質問してください」
一度にたくさん聞かれると、答えるほうが疲れてしまいます。一つずつなら、答えられます。 - 「まずは最小限の機能だけで、形にしてください」
最初から全部を盛り込まない。まず動くものを作り、そこから足していきます。
これは、AIの操作の話というより、自分のやりたいことを整理して、言葉にする練習なのだと思います。参加された方からも、「AIの操作だけでなく、要件を整理して言語化することの大切さが分かった」という感想が寄せられました。
画面が動いた瞬間に、起きたこと
ここからは、私個人の感覚の話です。
3回の合宿を通じていちばん印象に残っているのは、自分の作ったものが画面の上で動いた瞬間の、参加者の皆さんの表情でした。画面が動く喜びは、思っていた以上に大きいものでした。
参加者の声にも、「アプリを作るのは難しいと思っていたが、自分にも作れると分かった」「AIに任せられる作業が、思っていたより多かった」といった言葉があります。
そしてもう一つ、予想していなかったことが起きました。作ったアプリを、「育てよう」という思いが生まれたのです。
買ってきた道具は、使いにくければ、我慢するか、別のものに買い替えるしかありません。けれど自分で作った道具は、直せます。「ここに項目を足したい」「この通知は朝のほうがいい」。そう思ったら、また手を入れればいい。
「BuyよりBuild」というコンセプトは、作れるようになること自体よりも、自分の仕事の道具を、自分で育てていく関係に変わることに、本当の意味があったのかもしれません。参加者の声の中に「業務の中の非効率を、もっと洗い出してみたい」というものがあったのは、その表れではないでしょうか。
徳島の中小企業・学校・自治体の皆さんへ
人手が限られている。専任のIT担当者はいない。大きなシステムを入れるほどの予算もない。地方の中小企業や団体にとって、こうした条件は長いあいだ「制約」でした。
けれど、自分の仕事に合った小さな道具を自分たちで作れるようになるなら、話は少し変わってきます。仕事の中身を一番よく知っているのは、現場の皆さんです。その知識が、そのまま道具の設計図になります。
まずは、日々の仕事の中から「面倒だな」と感じている作業を一つだけ選んで、インプット・トリガー・アウトプットの3つに分けて書き出してみてください。それだけでも、見える景色が少し変わるかもしれません。
MIKAI Labでは、徳島県内をはじめ全国の企業・自治体・学校の皆さんと、生成AIの研修や導入支援に取り組んでいます。今回のような「その場で作りきる」形式の研修も、対象や時間に合わせてご相談いただけます。よかったら、下のページものぞいてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. プログラミングの経験がなくても、AIアプリは作れますか?
作れます。徳島県神山町で開いた3回の合宿では、参加した17社・延べ19名の全員が、1日で1人1個のアプリを完成させました。参加者の多くはプログラミングの経験がありませんでした。必要なのはコードを書く力よりも、自分の仕事を「何をもとに・いつ・何を出すか」に分けて言葉にする力です。
Q2. 「インプット・トリガー・アウトプット」とは何ですか?
AIアプリを設計するときの3つの整理です。インプットは「何をもとにするか」(音声、領収書の写真、Excelの表など)、トリガーは「いつ動くか」(ボタンを押したとき、毎週月曜の朝など)、アウトプットは「何が出てくるか」(議事録、精算書、通知など)。この3点が言葉になれば、設計はほとんど終わっています。
Q3. 徳島で、同じような生成AI研修を依頼できますか?
はい。MIKAI Labは徳島県神山町を拠点に、県内全域への訪問とオンラインで、企業・自治体・学校向けの生成AI研修と導入支援を行っています。徳島県内に限らず、全国からのご依頼にも対応しています。対象者や目的、時間に合わせて内容をご提案します。
まとめ
神山町での3回の合宿から見えたことを、3つにまとめます。
- 17社・延べ19名の全員が、1日で「自分専用AIアプリ」を1個ずつ完成させた
- 鍵は、作りたいものを「インプット・トリガー・アウトプット」の3点に分けて言葉にすること
- 自分で作った道具は直せる。だから「育てよう」という思いが生まれる
道具を買って仕事を合わせるのではなく、仕事に合わせて道具を作り、育てていく。「BuyよりBuild」は、現場をいちばんよく知っている人たちにこそ、開かれた選択肢なのだと思います。
