この記事の要点

  • 日本の18歳の18.3%が生成AIを未使用。利用用途も「情報収集」「文章作成補助」に集中しており、活用の幅が狭い。
  • インドの若者がプログラミングや創作活動にAIを活用するのと対照的に、日本では「答えを確かめる道具」として使われている。
  • 学校の変化を「わからない」と答えた日本の18歳は20.1%。他国が2〜6%であるのと比べ、未来への想像力に大きな差がある。

生成AIを「使っている」と答えることと、AIを「使いこなしている」ことは別の話です。2025年に実施された18歳を対象とした国際比較調査は、その差を数字で可視化しました。日本の若者はAIの価値を認識しながら、なぜ活用の幅を広げられないのか——データから見えてくる構造的な課題を整理します。

調査が示す日本の生成AI利用の実態

調査によれば、日本の18歳の18.3%が生成AIを一度も使ったことがないと回答しています。利用している層でも、用途は「情報収集(28.1%)」と「文章作成の補助(27.7%)」に集中しています。

これらは生成AIの機能としては最も入口に近い使い方です。調べたいことを検索エンジン的に問い、文章の体裁を整える——AIを「高性能なツール」として扱う発想です。

インドとの比較で浮かぶ「用途の差」

同じ調査でインドの18歳の利用用途を見ると、上位は「プログラミング(24.1%)」と「創作活動(23.3%)」でした。日本とは明確に異なるパターンです。

プログラミングと創作活動に共通するのは、「正解がない問い」に向き合う行為だということです。プログラムは動けば正解ではなく、より良い設計が常に問われる。創作は自分の表現と他者の評価が交差する。AIはその探索の過程を加速させる相手として使われています。

一方の日本では、AIは「答えを確かめる道具」として機能しています。すでに問いがあり、その答えを効率よく引き出すための手段——これは検索エンジンの延長線上の使い方です。

「認識している」のに「使わない」というパラドックス

興味深いのは、日本の18歳がAIの価値を認識していないわけではないという点です。

  • AIの効率化メリットを認識している:76%
  • AIがイノベーションを加速させると考えている:69.8%

7〜8割が生成AIのポテンシャルを認めているにもかかわらず、実際の活用は限定的です。「知っているが、やらない」——このパラドックスの背景には、認識と行動の間にある何らかの壁があります。

その壁のひとつとして考えられるのが、「失敗しても大丈夫な問い」への慣れのなさです。答えが明確でない問いに向き合い、試行錯誤しながら探索する経験が、学校教育の中で積まれてきたかどうか。ここに差が生まれている可能性があります。

「学校はどう変わるか」への回答が示すもの

調査では「AIによって学校教育はどう変わると思うか」という問いも設けられています。「わからない」と回答した割合は、日本が20.1%に対し、他国は2〜6%でした。

他国の若者が「AIが教育をこう変える」という具体的な予測を持っている一方で、日本では5人に1人が「想像できない」と答えています。これは知識の差ではなく、自分の学習環境の未来について主体的に考える習慣の差だと読み解けます。

「学校がどう変わるか」を想像するためには、現在の学習がどういう意味を持つかを自分なりに問い続ける経験が必要です。その経験の積み重ねが、AIと自分の関係を能動的に描く力につながります。

「答え探し」から「問い探し」へ——転換のカギ

日本の教育が「正解を見つけること」を重視してきたのは事実です。定期考査、入試、資格——それらは「決まった答えがある問い」に対して正確に応答する力を評価してきました。

AIは、その構造に直接的に作用します。「答えがある問い」への回答はAIが得意とするところです。AIが当たり前のツールになった社会で価値を持つのは、「まだ答えのない問いを立てる力」と「答えが出た後にそれを批判的に検討する力」です。

教育者ができることは、AIが「答えを出してくれる道具」ではなく「思考を広げる相手」として機能する体験を設計することです。AIに100の選択肢を挙げてもらい、「なぜこれか」を言語化する。AIの回答に「本当にそうか?」と問い返す。そういう問いの習慣を育てる場を、授業の中に意図的につくることが求められています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 日本の若者のAI利用率は他国と比べてどの程度低いですか?

今回紹介した調査では、日本の18歳の18.3%が生成AIを未使用と回答しています。利用用途も情報収集・文章作成補助が中心で、プログラミングや創作活動への活用はインドなどと比べて低い傾向にあります。ただし利用率の差よりも重要なのは「何のために使っているか」の差であり、用途の広がりが課題の核心です。

Q2. なぜ日本の若者はAIの価値を認識しながら活用が広がらないのですか?

「正解がない問い」に向き合う経験の少なさが背景のひとつとして考えられます。AIを使いこなすには「試してみて、評価して、問い直す」という探索的な姿勢が必要です。答えの確認ツールとしてAIを捉えている限り、その可能性は限定的なままです。認識と行動の間にある壁は、学習経験のパターンに由来している可能性があります。

Q3. 学校でAIを「思考の相手」として活用するにはどうすればいいですか?

まず「正解を求める」のではなく「選択肢を広げるために使う」場面を設計することが有効です。たとえば、AIに複数の案を挙げてもらってから「なぜこれが良いか」を自分の言葉で論じる、AIの回答に反論してみる、といった課題設計です。AIとの対話を通じて自分の思考を外在化し、批判的に見直す習慣を育てることが、「思考の相手」としての活用につながります。

まとめ

国際比較データが示したのは、利用率の差だけではありません。AIをどんな目的のために使うか、という「使い方の設計」の差です。

  • 日本の18歳の18.3%が未使用。利用も情報収集・文章補助が中心で活用幅が狭い
  • インドではプログラミング・創作への活用が上位。「正解のない問い」への使い方が異なる
  • 「学校の変化がわからない」が日本20.1%対他国2〜6%。未来を自分事で想像する習慣の差が出ている

AIを「答えを確かめる道具」から「問いを広げる相手」へ——その転換を生み出すのは、テクノロジーではなく教育の設計です。AIが当たり前のツールになった今、教育者が問い直すべきは「何を教えるか」よりも「どんな問いを引き出すか」かもしれません。


出典・参考文献

  1. 18歳を対象とした生成AI国際比較調査(2025年)

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