この記事の要点

  • RANDの2026年調査で、宿題にAIを使う学生は62%。一方で67%が「AIを使うほど批判的思考が損なわれる」と感じている。
  • 子どもは「答えを丸ごともらう」と「考えるきっかけをもらう」を区別し、大人より細かく線を引いている。
  • 論点は禁止か解禁かではない。すでに使っている子どもが、AIの後に何を自分の言葉で説明できるかを設計することにある。

学生の62%が宿題にAIを使い、その一方で67%が「AIを学業に使うほど批判的思考が損なわれる」と感じている——。2026年3月にRAND Corporationが公表した、1,200人超の学生調査の数字です。

いちばんAIを使っている世代が、いちばんその害を疑っている。使いながら、怖がっている。この矛盾の中に、いまのAI教育の難しさが詰まっています。

AI利用は増えている。でも、不安も増えている

調査では、宿題にAIを使う学生が48%から62%へ増加。特に中学生と高校生で伸びていました。しかし注目すべきは利用率ではありません。

同じ調査で、67%が「AIを使うほど批判的思考が損なわれる」に同意し、10ヶ月前の54%から増えています。AIを使う学生が増えるのと同時に、考える力を弱めると感じる学生も増えているのです。

AI利用と不安の推移グラフ(宿題利用48→62%、批判的思考の不安54→67%)

子どもは、大人より細かく線を引いている

おもしろいのは、子どもたちがAI利用を一括りにしていない点です。答えそのものをAIに求める使い方は多くが「ズルだ」と感じる一方、調べもの・要約・アイデア出しは必ずしもズルとは思っていません。

答えを丸ごともらうのは違う。でも、考えるきっかけをもらうのはいい。大人が想像するよりも、子どもたちは自分なりに細かい線を引いているのです。

「認知的オフロード」が増強になるか、負債になるか

AIに任せると思考が外に逃げることもあれば、視点が増えて考えが深まることもあります。前者は「認知的オフロード」、後者は「認知的増強」に近いものです。

ただし、辞書も電卓もメモも認知的オフロードであり、それ自体が悪いわけではありません。問題は、預けた結果として自分の中に何が残るかです。AIの説明を受けたあと「なぜそうなるか」を考え直せるなら増強に、答えをそのまま受け取り判断も修正もしないなら短期的には楽でも理解が蓄積されない「認知的負債」に近づいていく。学生たちの不安は、この分岐点に触れているように見えます。

認知的オフロードが認知的増強か認知的負債に分かれる構造図

使うことは、もう決まっている

確認すべきは、「AIを使ってよいかどうか」がもう中心的な論点ではないということです。62%という数字どおり、子どもはすでに使っています。学校や家庭が禁止か解禁かを議論する間に、現実が先に解禁を済ませてしまいました。

だから本当の問いはその先にあります。解禁された世界で、どんなガードレールをつくり、どんな足場をかけるのか。動きを止めるのではなく、支えながら自立に導く設計が必要です。

不安を、教育設計の材料に変える

RANDの調査が突きつけるのは、子どもがAIを使っているという事実だけでなく、使いながら不安を抱えているという事実です。子どもたちは、どこまで使えば自分の力になり、どこから先は思考を手放すことになるのか、その境界を探しています。

大人がやるべきは、その不安を「使い慣れていないから」と片付けることではありません。子どもがすでに感じ取っている境界線を、学びの設計に変えることです。答えそのものを求めるのはどこからズルか、AIを使ったあとに何を自分の言葉で説明できればよいか——そうした問いを、授業・課題・評価の中に埋め込んでいく必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもがAIを使うのは危険ですか?

使うこと自体の危険・安全より、使い方が重要です。RAND調査では62%の学生がすでにAIを使っており、禁止か解禁かはもはや中心的な論点ではありません。問題は、AIを使ったあとに何を自分の言葉で説明できるか。答えを丸投げせず、考えるきっかけとして使う設計であれば、思考を深める道具になります。

Q2. 「認知的負債」とは何ですか?

AIに思考を預けた結果、短期的には楽に成果物ができても、自分の中に理解や判断力が蓄積されない状態を指します。辞書や電卓のように外部に認知を預けること自体は悪くありませんが、答えをそのまま受け取り判断も修正もしないと、その未払い分があとからツケとして返ってきます。

Q3. 家庭や学校でできる具体的な工夫は?

子どもがすでに引いている線引きを、学びの設計に変えることです。「答えそのものを求めるのはどこからズルか」「考えるきっかけはどこまで学びを深めるか」「AIを使ったあと何を自分の言葉で説明できるか」といった問いを、課題や評価に埋め込みます。不安を否定せず、設計の材料として活かすのがポイントです。

まとめ

RANDの調査は、AI教育の次に考えるべき論点をはっきり示しました。

  • 宿題にAIを使う学生は62%。一方で67%が「批判的思考が損なわれる」と感じている
  • 子どもは「答えをもらう」と「きっかけをもらう」を区別し、大人より細かく線を引いている
  • 論点は禁止か解禁かではなく、すでに使う子どもの不安を学びの設計に変えること

子どもがAIを使うかどうかではなく、AIを使ったあとに何を自分の言葉で説明できるようにするか。授業も課題も評価も、そこから組み直していく必要があります。


出典・参考文献

  1. RAND Corporation 学生のAI利用に関する調査(2026年3月公表)

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